オフィスへの期待を
すべて受けとめる
「社員全員の顔が見渡せるワンフロアのオフィスにしたい」。この言葉は、お客様がこれまで移転先のオフィスに一貫して求めてきた基本条件だ。同社は、独特のグループ経営で急成長している金融サービス会社だ。規模の拡大とともに2~3年に一度、オフィス移転を繰り返してきた。
「ご覧のように人員もグループ会社も増えたので、また引越しをします。今回も良い提案をお願いします」。担当者様はそう言って私に微笑んだ。
当社は創業の頃からずっとお手伝いさせていただいている。お客様の期待に応えるべく、さっそく社内メンバーを集めた。
進化する「働く」を形にする
ガラス張りの空間、社員が共通で使える休憩スペースなど、お客様の要望は具体的だった。話を聞きながら、私の頭の中では新しいオフィスで働く社員の皆さんの姿を想像した。今のオフィスより、明るく、いきいきと働ける空間でなければならない。お客様の成長のカギはここで働く社員の皆さんのがんばりにある。だから“働きやすい環境づくり”は、事業拡大に向けた環境づくりでもある。
私は、自分の想いを社内の設計担当に伝えた。ミーティングを何度も繰り返し、リフレッシュスペースにカウンターを設置するなどのアイデアをまとめ、お客様に提案した。すると、思いのほか喜んでいただき、ほぼプランどおりに施工することになった。
ここで働く人の笑顔をゴールに
「なるほど、これは良い気分転換になるな」。私は、完成したリフレッシュスペースを確認しながら、そうつぶやいた。この開放感は旧オフィスにはない。脇には防音・個室のブースが設置されている。これまであまり見なかった設備だが、テレワーク時代のオフィスの必需品になるだろう。
「今回もバッチリですね!」と、担当者様は満面の笑みで言った。ワンフロアではあるが、エントランスとリフレッシュスペース、社内ミーティングスペースを分けたことにより、来客する人の目が比較的気にならなくなってスペースを利用する人が増えたと言われた。
褒められるのは嬉しい。もっと嬉しいのは、ここで働く社員の皆さんの笑顔を見ることだ。満足できるオフィスになったかどうか。評価するのはお客様だが、私には揺るぎない価値観がある。それは、私自身がここで働きたいと思えるかどうか。今回は満点を付けたい仕上がりだった。